0時に寝て7時に起きた。
もてなしだけではもう食えない
読み終えた。あとで総評を書く。
第10章 不動産屋の悪知恵
2000年に改正された借地借家法38条の「定期借家」の条項から賃貸契約には2種類あるらしい。
- 普通借家
- 定期借家
普通借家は契約期間更新の概念があり、借り主が契約更新を拒否するには「正当な事由」が必要になる。一般的な賃貸マンションなどの契約も多くのケースでこちらの契約になる。ここでいう正当な事由とは、建物が老朽化して立て直す必要があるとか、貸し主がそこに住むといったものらしい。一方で定期借家は契約期間が終了すれば、一旦契約は終了してから新たに再契約するといった段取りになる。この定期賃貸借契約の条件を満たすには、契約期間更新の定めがないことを説明した書面を交付する必要がある。その書面がない場合はすべて普通借家とみなされるという。その是非を巡って争った最高裁の判例があるらしくググるとすぐに出てくる。当事者同士で双方の合意があったとしても説明書面がない場合は無効とするような判例となっている。これを逆手に取れば、普通借家として契約更新を主張できるというストーリー展開になっている。
あとは PDCA サイクルのうち、日本の会社で一番弱いところはどこ?という話題が出てくる。Check だろう?という主人公の答えに、アドバイザーは Plan じゃないかと返す。Plan が曖昧だから Check できないという背景になっているのではないかと。一理あるかもしれない。日本人は気質として誰か1人が責任を担うのを嫌う文化があるように思う。個人の責任にしたくない・されたくないという空気から Check を曖昧にしたがる傾向があると私は考えている。
第11章 エピローグ
タイトルのままの章でホテル経営についてのアドバイスがあるわけではなく、ストーリ仕立てで展開してきた物語の結末や登場人物たちのその後のキャリアや展望などを紹介している。総じてハッピーエンドと言えるし、総じて人生の中のスナップショットとしてこんなもんとも言える。区切りがきてなんらかの結果が出たとしても、さらに人生は続くので日常が少し変わっていくだけといった展開になっていた。
あとがき
著名なホテルの総支配人と著者との対談がある。読んでいて関心をもてたところは Job Description (職務分掌記述書) の重要性が説かれている。適正な評価、公平な人事、採用にも必要とされる。この考え方はメンバーシップ雇用を長く続けてきた日本の会社の年功序列とは大きな違いがあるため、制度設計の見直しは時間がかかるのだろうと思える。過去のしがらみがない新興企業が新たに制度設計して台頭していくのがよいのだろう。
また外資系という言葉に抵抗感のあるスタッフに対して「トヨタやファーストリテイリングは外資系ですか?日系ですか?」と尋ねるという話題も出てくる。そうすると、外資系や日系というグルーピングに意味がないことに気付く。その違いを対談の中ではグローバルかノングローバルかの違いでしかないと説明されている。ビジネスの規模や競合をグローバルの視野で考える必要があるかどうかによって変わってくるという。
勝てる能力があってもその素地となる基礎体力がないと発揮できない。野球でも基礎体力があるから速い球を投げられる。
これもホテル経営に限った話しではないなと思えた。私自身、昨今の開発チームをみていて感じることでもある。クラウドでアプリケーション開発が簡単になったがために基礎がなく、スキルが低い開発者もメンバーの一員として働けるようになった。もちろん最初は誰もがそうだけど、適切な指導や教育を受けないとそのまま経験年数だけが経ってしまう。さらにそんな人が偶然リーダーになってしまうと 許される無知の範囲は開発経験年数に反比例する という現象が起きる。一定の水準を超えていない開発者がなにを作ってもうまくいかないのではないかと私は感じるようになってきた。私はそういったプロダクトを「ただ動くだけ」と呼んでいる。その後の拡張や保守に必要以上にコストがかかり、それが原因で将来の開発計画に支障をきたすこともある。そして、多くのケースでその状況を作った人はその後いないことが多い。