openldap スキーマと parser generator
この開発フェーズではあまり機能拡張を行わない方針としているが、できればやっておいた方がよい機能拡張の1つに openldap サーバーから ldap スキーマを取得する処理がある。ちょうどいま若いメンバーに実装してもらっている大きな機能のバリデーションにも ldap スキーマの情報があると便利そうなので私が対応することに決めた。
openldap サーバーで管理している ldap スキーマの定義は openldap サーバーの Schema Specification と rfc 4512 の2つをみると仕様がわかる。たとえば、次のように AttributeTypeDescription というスキーマの定義は Augmented Backus–Naur form (abnf) という記法で定義されている。rfc などのネットワークプロトコルの世界では abnf のフォーマットで仕様を説明することが多いらしい。
AttributeTypeDescription = "(" whsp
numericoid whsp ; AttributeType identifier
[ "NAME" qdescrs ] ; name used in AttributeType
[ "DESC" qdstring ] ; description
[ "OBSOLETE" whsp ]
[ "SUP" woid ] ; derived from this other
; AttributeType
[ "EQUALITY" woid ; Matching Rule name
[ "ORDERING" woid ; Matching Rule name
[ "SUBSTR" woid ] ; Matching Rule name
[ "SYNTAX" whsp noidlen whsp ] ; Syntax OID
[ "SINGLE-VALUE" whsp ] ; default multi-valued
[ "COLLECTIVE" whsp ] ; default not collective
[ "NO-USER-MODIFICATION" whsp ]; default user modifiable
[ "USAGE" whsp AttributeUsage ]; default userApplications
whsp ")"
AttributeUsage =
"userApplications" /
"directoryOperation" /
"distributedOperation" / ; DSA-shared
"dSAOperation" ; DSA-specific, value depends on server
openldap サーバーに対して ldap スキーマを取得する方法は How can I fetch schema information from the server? の faq に書いてある。search base に対してサブスキーマサブエントリを返す dn を取得する。openldap サーバーの場合 ldap の root ツリーに対応するのは cn=Subschema
がデフォルトとなる。
$ ldapsearch -H ldap://localhost -x -LLL -b dc=example,dc=com -s base subschemaSubentry
dn: dc=example,dc=com
subschemaSubentry: cn=Subschema
この dn にスキーマ情報の属性が格納されているのでそれらを取得する。このスキーマ情報は operational attributes として管理されているので +
という記号が operational attributes 属性群をまとめて取得するキーワードになっている。
$ ldapsearch -x -LLL -b cn=Subschema -s base '(objectClass=subschema)' +
これでスキーマ情報を取得できる。先に書いた AttributeTypeDescription の実際のスキーマ情報は次のような内容になる。こういったスキーマのテキスト情報をたくさん取得できる。
( 2.5.4.0 NAME 'objectClass' DESC 'RFC4512: object classes of the entity' EQUALITY objectIdentifierMatch SYNTAX 1.3.6.1.4.1.1466.115.121.1.38 )
go の parser generator 調査⌗
この手のものは abnf から parser をコード生成するのが一般的なやり方かな?と、まずは go で使えそうな parser generator について調べてみた。意外と go 製の parser generator はみつからなかった。私が発見できたのは次の3つぐらい。
最後の antlr は java 製のツールだけれども、go のソースコードを出力できるので go 実装の parser をコード生成できるという意図で対象としている。goyacc は abnf の文法を yacc に変換しないといけない。yacc で実装した ldap スキーマの parser を公開しているのもみかけたが、yacc は違うなと思って除外した。antlr も abnf から専用の文法に変換しないといけないから不採用にした。
それで消去法的に bnf (ebnf) を扱える gocc で parser をコード生成できないかを調査してみた。しかし、半日ほど bnf を書いて実際にコード生成してみて不採用とした。ebnf の options 記法として [...]
に gocc が対応していないようにみえた。この記法がないと ldap スキーマの文法定義が煩雑になる。issue のコメント をみると、lexer は対応したが、parser は対応していないといったコメントがある。コード生成しようとするとエラーになるので未対応なのかもしれない。bnf でこの options 記法相当のものを自分で文法定義すると、1つ2つなら簡単に変換できるが、数個の組み合わせがあると途端に文法の複雑さが大きくなるように思える。abnf から bnf に変換する過程で文法が複雑になってしまうとその後の保守ができなくなる懸念が生じるので断念した。
今回の gocc の採用は却下したが、軽く触ってみて gocc 自体の感触はよかった。シンプルな bnf で表現できるものであれば機会があれば採用してもよいと思える。gocc example をみればわかるが、bnf を書きながら単体テストのコードを実行して動作検証を小さく簡潔にできる。これは parser のコード生成の開発サイクルは速くできそうに感じた。こういう小さく単体で動くツールは好み。
最終的な結論としては parser generator は使わず、自前で parser を実装することを決めた。