不正の調査報告書

少し前にタイムラインでグレイステクノロジーという会社の粉飾決算が話題になっていたので関心をもっていて、調査報告書が公開されていたので読んでみた。100ページ超あるので目を通すだけでも数時間ほどかかった。

うちはマイクロ法人なんでなんのプレッシャーも目標もない、お気楽な会社ではあるけど、失敗事例から経営や会計を学ぶ機会にしている。多くのケースで成功する方法はわからないけど、失敗しない方法はいくつもある。凡人は成功しようとせずに失敗しないように注意するのがよいと私は考えている。これは麻雀で振り込まなかったら勝てるというのに近い考え方だ。

閑話休題。報告書を読んでいて最初は1社員による小さな不正だった。もちろんそれもよくないことだが、経営陣がまともであれば、いくらでも訂正することも立て直すこともできた。しかし、経営陣もおかしかった。すぐに個人の不正が組織ぐるみになり、創業者の虚栄心も拍車をかけて、2-3年後には数億円規模の不正となり、不正を働いた関係者が一蓮托生となった。これは構造的な問題もしくは失敗を学ぶ教材となる。関係者個人の道徳心や正義感などを批判することもできるだろうが、それよりも構造的にそんな状態に陥らないように会社の仕組みを作ることが重要で、一般論ではそれをコーポレートガバナンス (企業統治) と呼ぶのだろう。しかし、経営者がみずから不正をすることに対するガバナンスとはどう在るべきなのか、この問題に対する構造的な対策はなかなか難しいのだと、この調査報告書は語っている。

なんら擁護するものではないが、読み進めていて、関係者みんな辛かっただろうなと不正をしなければいけない状況や心境を察してしまった。目標数値が高過ぎる、過度なパワハラ、コーポレートガバナンスの不備などがその状況を5年も維持し続けてしまった。もっと早く明るみに出ていたら、いまより関係者は苦しまなかっただろうが、歴史に if はないので推測でしかない。不正の中心人物である創業者は急性大動脈解離で急逝しており、それは認知的不協和のストレスによって引き起こされた可能性が高いのではないかと私は考えてしまった。不正に限った話ではないが、なんらかの間違いというのは早期に検出できて、早期に改善のための取り組みをする方が短期的に大きな損害を被ったとしても、中長期的には最大の利益を得るというのを、多くの人は人生の経験の中で学んでいくと思う。たまたまその経験をもっていない人たちがこの会社には集まってしまって、不幸な事件が起きてしまったように私は受け取ってしまった。